四文字熟語で刻石流水こくせきりゅうすいとあります。「受けた恩はどんなに小さくても石に刻み、施したことを手柄のように何時までも記憶に留めず水に流す」ことを言います。
 「恩に四種あり、一に父母の恩、二に衆生の恩、三に国王の恩、四に三宝の恩。この如き四恩は、一切衆生、平等に荷負す」と『心地観経』にあります。
また『佛説父母恩重経ぶつせつぶもおんじゅうきょう』には、父母の恩について次のように具体的に説かれています。

父母の恩重きこと天の極まりなきが如し 父母に十種の恩徳あり。何をか十種と為す。

一、懐胎守護の恩
十ヶ月の間、行住坐臥ともにもろもろの苦悩を受く。苦悩止む時なきが故に、愛欲の念を生ぜず。血を分け、肉を分かちて、身重病を感ず。

二、臨生受苦の恩
業風催促して遍身疼痛し、骨節解体して苦しみ耐え難し。心神脳乱し、忽然として身を亡ぼす。父も母と子とを憂念し諸親眷属皆悉く苦悩す。

三、生子忘憂の恩
子が誕生し、この声を発するを聞けば、貧女の如意珠を得たるが如し。己も生まれ出でたるが如し。

四、乳哺養育の恩
母の膝を遊び場となし、母の乳を食物となし、母の情けを命となす。母にあらざれば育てられず。母にあらざれば養われず。

五、廻乾就湿の恩
水の如き霜の夜にも、氷の如き雪の暁にも、乾ける処に子を廻し、湿りし処に己臥す。

六、洗灌不浄の恩
子、己が懐に屎り、或いはその衣に尿するも、手自ら洗い濯ぎて臭穢を厭うことなし。

七、嚥苦吐甘の恩
食味を口に含みては、これを子に哺むるにあたりては、苦きものは自ら嚥み、甘きものは吐きて与う。

八、為造悪業の恩
子の為に止むを得ざる事あれば、自ら悪業を造りて悪趣に堕つることを甘んず。

九、遠行憶念の恩
子、遠く行けば、帰りてその面を見るまで、出ても入りてもこれを憶い、寝ても覚めてもこれを憂う。

十、究竟憐愍の恩
己生ある間は、子の身に代わらんことを念い、己死に去りて後は、子の身を護らんこと願う。

父母の恩重きこと天の極まりなきが如し
一日一度、感謝の誠を捧げ、ご両親の顔を思い出すことが大切なことと思います。

合 掌



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