お釈迦様は、弟子達に喩え話をされました。
「鋤と袋をもってこの大地の土を無くそうと『土よなくなれ、土よなくなれ』と言っては掘ってまき散らす。あなたたちは如何に思いますか、この人は土を無くす事が出来るでしょうか。」
「世尊、それはできません。大地の深さに限りがないからです。」
「弟子達よ、あなたたちはその様に如何なる言葉を持って語られても心が変わらぬよう、同情(なさけ)と愛憐(あわれみ)を以てその人に向かい、慈しみの心を天地に満たすように学ばねばなりません。弟子達よ、例えば絵の具を取って『虚空に絵を描こう』と企てても、形のない空に物の姿を表す事が出来ないように、又枯草で作った松明を持って恒河(ガンジス河)を燃やし乾かそうと努めても出来ぬように、或いは柔らかに鞣した皮を摩擦してザラザラという音を立てようとしてもできないことは理解できるでしょう。あなたたちは如何なる言葉をもって話し掛けられても決して心の変わらぬように、大地の如く広く、虚空(おおぞら)に書き表す事が出来ず、恒河の如く深く、鞣皮の如く柔らかに心を持ち、同情と愛憐を以て向かい、慈しみの心を天地に満たすように学ばねばなりません。」『牟犁破群那経むれいはぐんなきょう

 日本の諺や言い伝えに「枯れ木に花」「炒り豆に花が咲く」「水で物を焼く」「竹竿で星を払い落とす」等、既に衰えたものが再び栄えたり、起こるはずのないことが起こったり、望んでも不可能なことを願っています。冷静に事の次第を考えれば、不可能なことが直ぐに理解でき、納得できる筈なのに間違って判断しています。そんな人を愚者と言います。

合 掌



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