旅行会社のパンフレットで、冬の味覚と言えば「蟹」。熱帯から極地まで、世界中の海や川や陸上に生息し、大きさは数ミリから、3mを超すカニまで様々で、世界では8,000種、日本でも1,000種類生息していると言われています。
 百科辞典で調べてみると、カニ(蟹)は、十脚目短尾下目たんびかもくに属す甲殻類の総称です。タラバガニやヤシガニは十脚目異尾下目いびかもく(ヤドカリ下目)で、カニと名前が付いているので見た目は同じように見えますが、実は種類が全く違うヤドカリの仲間です。しかし、漁業の流通上は両者とも「カニ」として扱われているそうです。
 良く知られているカニで、ズワイガニは、越前蟹、松葉蟹、間人たいざ蟹などと呼ばれ地域名称が付けられていますが、どれも同じズワイガニで主に日本海側に生息しています。「ズワイ」の由来は、細い木の枝のことを指す古語「楚(すわえ、すはえ)」が訛ったものと言われています。ベニズワイガニは日本海全域の水深の深いところに生息しています。タカアシガニは世界最大のカニで、脚を広げると最大3mにもなります。生きている化石ともいわれており、太平洋の深海に生息しています。ガザミ(ワタリガニ)は、国内全域に生息しています。モクズガニ(カワガニ)は淡水に生息しています。ケガニは北海道を代表するカニで、ホーツク海と太平洋側で多く生息しています。タラバガニは北海道周辺に生息する「カニの王様」で、鱈の漁場(鱈場[たらば])と重なることからタラバガニと命名されていますが、実はヤドカリの仲間です。ハナサキガニは熱を加えると花が咲いたように鮮やかな朱色に変わることから、ハナサキガニといわれています。タラバガニと同じくカニと呼ばれていますが、カニの形をしたヤドカリの仲間です。カニの姿をしたヤドカリであることに驚きました。

 お釈迦様の教えに、外見に違いはなくても素質が全く違う心の持ち方が存在することを明確に述べておられます。その中で修行とは、菩薩として生きる事であり、輪廻転生してもなお修行を続ける事です。瑜伽唯識ゆがゆいしきの教えでは、修行者の生まれつきの素質を五種に分けています。外見は同じでも全く違う佛性ぶっしょうを持つ為、修行すれば悟れる人と、どれだけ努力しても悟る事が出来ない人など五種に分けていて、これを五姓各別ごしょうかくべつと呼んでいます。

 ① 菩薩定姓ぼさつじょうしょうは、菩薩として修行し将来必ず悟りを得る事が出来る人です。

 ② 縁覚定姓えんがくじょうしょうは、いずれ独善的な悟りを開く人です。

 ③声聞定姓しょうもんじょうしょうは、いずれ小乗佛教の修行者になる人です。

 ④ 不定姓ふじょうしょうは、そのいずれとも定まっていない人です。

 ⑤ 無姓有情むしょううじょうは、どんなに修行をしても永遠に悟る事が出来ないと確定している人です。一闡提いっせんだいともいい、世俗的快楽だけを求めている人です。

 カニと佛教、とりわけ瑜伽唯識とは一見関係の無いように思えますが、外見は同じように見えても内容(素質)が全く違う心を持つ人間の生き方を示唆しているように考えます。心の持ち方を正直に捉え常に正しい道を歩み、道を踏み外さないよう努力精進する事に心掛け、万人の幸せを願う必要性と大切さに正面から向き合って修行に励まなければならない、と瑜伽唯識の思想における修行の在り方が説かれています。

合 掌



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