薬師寺の御本尊であるお薬師様は、瑠璃光浄土の教主で、薬師如来(Bhaiṣajya-guruバイセィジャ・グル)や医王如来と言われています。
経典は、唐の永徽元年(650)5月5日大慈恩寺にて玄奘三蔵が翻訳した『薬師瑠璃光如来本願功徳経』(通称 薬師経)と、景竜元年(707)義浄が翻訳した『薬師瑠璃光七佛本願功徳経』(通称 七佛薬師経)がよく知られています。
 薬師経では、お薬師様は東方瑠璃光浄土おわしまし、菩薩であった時に十二の大願を発し、病気の苦しみをやわらげ、長寿を願い、恐怖を取り除き、衣食などを満足せしめ、佛様の信仰を深め、無上菩提の妙果を証らしめんと誓い、お悟りを開いて佛と成りました。
 お薬師様のお姿は、立像・坐像ともにあり、右手は 施無畏印せむいいんで、左手は与願印よがんいんとし、左手に薬壺やっこ をお持ちになっています。しかし薬師寺金堂薬師三尊像や唐招提寺金堂薬師如来像は、古い形式のため薬壷をお持ちになっていません。これは、不空訳『薬師如来念誦儀軌』の伝来以降に薬壷を持物とする記載があり、奈良時代後半から平安時代にかけ薬壺をお持ちになったお像も造られるようになりました。独尊としてお祀りされる場合もありますが、薬師三尊像として祀られる場合は、向かって右に日光菩薩様、左に月光菩薩様を脇侍としてお祀りされています。眷属として十二神将像をお祀りしている寺院もあります。
 8日や12日がお薬師様の縁日とされていて、8日はくしの語呂合わせ、12日は薬師十二・・大願に合わせて勤められています。奈良薬師寺では毎月8日11時から金堂で、東京別院では毎月12日13時から大般若経転読法要が勤められ、続いて法話もあり、どなたでもご参拝頂いています。

お薬師様が私たちに約束された願い事を十二大願といい、
①瑠璃の輝きは世界を照らし、全ての人々を悟りに導きます
②瑠璃の輝きは雄々しく巍々蕩々としていて、迷いの闇を破り浄瑠璃浄土に導きます
③悟りを得るために必要なあらゆる財物を施します
④迷う衆生を佛道へ導く方法を教えます
⑤戒律を破ってしまった者を反省させその罪を清めさせます
⑥病気や身体的苦痛を取り除きます
⑦病気や苦しみを取り除き、身心安楽にして無上菩提を証します
⑧成佛するために男女の区別なく無上菩提に至らせます
⑨正しい菩薩道に引き入れ、苦痛や煩悩を浄化できるようにします
⑩災禍や暴力などに苦しむ衆生が解き放たれるべく援けます
⑪著しい餓えと渇きに晒された衆生の苦しみを取り除きます
⑫困窮して寒さや虫刺されに悩まされる衆生に衣類を施します

 この様にお薬師様は、十二の大願を立てて私たちを清らかな瑠璃光浄土にお導き頂きご利益を下さいます。どうぞお薬師様のご真言をお唱えいただき、皆様の心にお薬師様のお慈悲をお受け止め下さい。
 お薬師様のご真言は、オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ(oṃ huru huru caṇḍāli mātaṅgi svāhā) です。
もっと丁寧に言う場合は、ノウボウ バギャバテイ バイセイジャ クロ ベイルリヤ ハラバ アラジャヤ タタギャタヤ アラカテイ サンミャクサンボダヤ タニヤタ オン バイセイゼイ バイセイゼイ バイセイジャ サンボリ ギャテイ ソワカ(namo bhagavate bhaiṣajyaguru vaiḍūryaprabharājāya tathāgatāya arhate samyaksambuddhāya tadyathā oṃ bhaiṣajye bhaiṣajye mahābhaiṣajya-samudgate svāhā) です。

合 掌



「加藤朝胤管主の千文字説法」の感想をお手紙かFAXでお寄せください。
〒630-8563
奈良市西ノ京町457 FAX 0742-33-6004  薬師寺広報室 宛