五戒ごかいとは、佛教において信者が守るべき基本的な五つのいましめです。
戒は、佛教徒である人が守らなければならない戒めです。律は、人である限り必ず守らなければならない法律です。人生を善く生きるべき指標であり、道徳です。
今回は「不殺生ふせっしょう」「不偸盗ふちゅうとう」「不邪淫ふじゃいん」 「不妄語ふもうご」「不飲酒ふおんじゅ」の五つのいましめの内、「不飲酒」についてお話します。

「お酒は冷えた身体を温め、身体を養生し、心にも喜びをもたらすものなのに、どんな理由があってもお酒を飲んではいけないのですか。」「お酒は人の心を動揺させ、だらしなく身勝手にさせます。一切飲んではいけません。」「身体の為になることは非常に少なく、 害することが大変多いからです。決して飲んではいけません。美味い飲み物の中に毒が混じっているようなものです。」
お酒がどのような毒であるかは、お釈迦様がお酒には多くの過失があると『大智度論』に説かれています。

酒は悟りの相を失って、身体を濁らせて悪くする。
智慧の心は動揺し散乱し、自他に恥じることもない。
自心を制することがなくなって怒りを増し、歓びを失って家族を棄てる。
酒を飲むというのは、実際は死の毒をあおるのに等しい。
怒ることでないことに怒り、笑うことでないことを笑い、泣くことでないことに泣き、ふるってはならない暴力をふるい、語ってはならないことを語るのは、狂人と変わりなく、諸々の善功徳を消し去る。
よって恥を知る者は飲まないのだ。
龍樹『大智度論』より

なぜお酒を飲んではいけないのか『スッタニパータ』に飲酒の過失は禍の起こる元であると説かれています。また『スッタニパータ』所収の「ダンミカ経」には、酒は人を酔わせるものであるから飲んではいけません。ともあり、 更に「酒を人に勧めて飲ませる事や、他人が酒を飲むことを容認してもいけない」と説かれています。飲酒について、自他に対して厳しい態度をとるべきことが説かれています。
 酒も麻薬も人を酔わせる点、中毒になる点では同じです。人は酔って悪事をなし、怠惰となるからです。実際、人が酒に酔って痴態をさらし、何らかの悪事を行うのは珍しい事ではなく、重大な犯罪を引き起こすことも決して稀な事ではありません。 酔いは、他人を狂わせ日常の小さな過ちから取り返しのつかない悲劇を巻き起こす原因となり得るものです。飲酒は、禍の起こるもととなります。

合 掌



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