五戒ごかいとは、佛教において信者が守るべき基本的な五つのいましめです。
戒は、佛教徒である人が守らなければならない戒めです。律は、人である限り必ず守らなければならない法律です。人生を善く生きるべき指標であり、道徳です。
今回は「不殺生ふせっしょう」「不偸盗ふちゅうとう」「不邪淫ふじゃいん」 「不妄語ふもうご」「不飲酒ふおんじゅ」の五つのいましめの内、「不妄語」についてお話します。

私たちは、身体で行ったり、言葉で行ったり、心で行ったり、三種の方法で行為を表します。中でも、言葉の行為には四種あり、妄語もうごは嘘をつくこと、 綺語きごはおじょうずを言うこと、悪口あっく悪口わるくちを言うこと、 両舌りょうぜつは二枚舌を使う事です。 言葉は瞬間に消えてしまう様に思いますが、自ら口に出した言葉に責任を持たなければいけません。 「一度口に出した言葉は、四頭立ての馬車でも追いつけない。言葉は慎むべきである。」と論語に教えられています。

も舌に及ばず(出典:『論語』顔淵第十二)
原文
棘子成曰。君子質而已矣。何以文爲。子貢曰。惜乎。夫子之説君子也。駟不及舌。文猶質也。質猶文也。虎豹之鞟。猶犬羊之鞟。

訓読
棘子成きょくしせいいわく、君子くんしは質のみ。何ぞぶんを以て為さん、と。 子貢しこう曰く、おしいかな、夫子ふうし君子くんしを説くや。 も舌に及ばず。ぶんなおしつのごとく、 質はなお文のごときなり。 虎豹こひょうかくなお犬羊けんようかくのごとし。

原文の通釈
衛の大夫棘子成が、「君子は中身が充実していればそれで良い。何も文飾教養など必要ない」と言った。これを聞いた子貢は、「貴殿の君子論は見当違いです。一旦口から出た失言は四頭立ての馬車といえども取り返すことが出来ないと言います。 文と質は表裏一体のものであり、文なくして質はなく、質なくして文もありません。もし質だけで良いとするならば、喩えてみれば、貴重な虎や豹のみごとな毛並みを、わざわざ剃り落としてなめし革にしてしまうようなもので、 月並みな犬や羊のなめし革と何ら変らなくなるではないですか」と言った。

語彙の注釈
棘子成 … 衛の国の大夫。質 … 実質。文 … 外観。かざり。夫子之説 … 棘子成の君子論。駟 … 四頭だての馬車。虎豹 … 虎と豹。鞟 … 毛を取り除いた皮。なめし皮。

合 掌

写真は、中国西安の大雁塔



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