このお話は、苦しみや煩悩、迷い等の多い現世を燃えさかる家に喩えたものです。
『妙法蓮華経』には、法華七喩といって、七つの有名な譬喩が説かれています。その第一は「火宅の譬喩」で「火宅とは、この世はあたかも燃えさかる家で迷いの世界です。
燃えさかる家の中で、三人の子どもたちが何も知らずに遊んでいました。多くの財宝を所有する親は家の外から、火事だから早く外へ出るように叫び続けますが、子どもたちは遊びに夢中で一向に出てこようとしません。思い余って親は、「外にはもっと楽しいおもちゃがあるぞ」
と叫び、それぞれ羊の車、鹿の車、牛の車を与えることを約束します。無事に子どもたちを外に連れ出し、助ける事ができました。親はどの子どもにも「法華経の教えが悟りに導く最上の乗り物(教え)で、白牛によって引かれる大きな立派な車」を与えます。
これに乗りさえすれば、いかなる人も同じ悟りを得られるのです。
この譬喩の場合も方便を説いています。燃えている家屋は、迷いの世界のことです。子どもたちは、衆生のこと。親は佛の教えです。羊の車は声聞乗、鹿の車は緑覚乗、牛の車は菩薩乗です。
私たちにはいろいろな段階があって、声聞乗はお釈迦様の教えを聞いて実践すること。緑覚乗は自ら悟りを開こうとする実践。菩薩乗は全てを救済しようと自他共に悟りを開こうとする実践です。
何も気づかない凡夫である私たちを正しい教えに気づかせるには、その人の最も好むものを用いるのが手っ取り早く有効な方法です。実際には白牛車は法華一乗の教えで、最終的には、このどれもが本質は一つに帰するので一乗と名付けます。
佛教が衆生を導く手段として、この白牛車に乗って佛道を歩み、幸せの世界へお導きくださる事を表しています。
このお話は『妙法蓮華経
合 掌
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