「サルの植木屋」のお話は、南伝佛教のジャータカ物語に登場します。ジャータカ物語とは、お釈迦様の前生を説く物語で、
印度の
釈迦国の皇太子の身分を捨て、修行を積んでお悟りを開かれたお釈迦様の教えを、誰もが解り易く理解できるように物語の形にしたのがジャータカ物語です。
むかし、ブラフマダッタ王がベナレスの国を治めていた時のことです。ベナレスの町で笛や太鼓が鳴り響いて盛大なお祭りが開かれていました。街の人々はこぞってお祭り見物に出かけました。王様の御殿には沢山のサルが住んでいました。御殿のお庭係の植木屋は、鳴り響く笛や太鼓の音を聞いてお祭りが始まったから、植木に水をやる仕事をサルに代わってもらい、お祭りに出かけようと思いました。
そこでサルの頭の処へ出かけ、「このお庭は、お前たちにも大切な庭だ。花や木の実や若芽を取って食べているのだから、水やりを手伝ってはくれまいか。町でお祭りが始まったから出かけようと思うが、私が帰ってくるまでこのお庭の植木に水をやっておくれ。」と頼みました。するとサルの頭は、「わかりました」と快く引き受けてくれました。植木屋は、植木に水をやる道具をサルに預け、お祭りに出かけて行きました。
サルたちは植木に水をやり始めました。そこでサルの頭は言いました。「僅かな水を大切にしなければいけない。水をやる時は先ず植木を引き抜いて根の大きさを調べ、大きな根には水を沢山かけておやりなさい。小さな根には少しでいい。後で水が足りなくなるといけないからね。」手下のサルは頭の言う通りにしました。
そこへ一人の賢人が通りかかり、王様のお庭で水やりをしているサルの仕事ぶりを見て、なぜ植木を引き抜いてから水やりをするのかと尋ねました。サルたちは「これはお頭の命令で・・・・」とその訳を説明しました。賢人は訳を聞いて、智慧の無い愚か者は良い事をしているつもりで却って役に立たないことをしでかすものだと呆れ果てました。
折角骨を折りながら 善い行いも水の泡
智慧の足りない浅ましさ 庭の世話するサルごらん
賢人はサルの頭に正しい水やりの方法を教えました。
合 掌
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