白鳳時代唯一で、創建以来1300年の歴史ある国宝東塔の解体修理が完了し、令和5年4月21日より25日の5日間、落慶法要を厳修致します。
 この度の解体修理は、塔で最も重要である中心柱が根元から腐食していて、とても危険な状態であることが確認され、災害が発生した時倒壊の恐れがある為、早急に修理をする必要性が生じました。中心柱の腐食部分を削り取り空洞化している部分に新たな心柱を埋木する大工事でした。
 工事事務所の技官より、削り取り木屑となった腐食部分は柱としての用途が無くなったので廃棄すると報告がありました。確かに削り取った部分は柱材として用途を終え細かな木片になったものの、1300年に亘り大勢の人々が三重塔を仰ぎ手を合わせ、祈りや願いが込められた大切な心柱の一部です。その思いは、喜びであったり、苦しみや悲しみの願いであったかも知れません。麗しい心豊かな国造りを目指された天武・持統両天皇の情熱が、高い精神性として建立された薬師寺の大伽藍の中でも、東塔は、白鳳時代より伝えられた唯一の建物です。三重塔に込められた祈りや願いは、柱や壁や瓦に沁み込んでいます。だからこそ、聳えたつ東塔を目の当たりにすると、言葉に表現できない重厚さと大いなる感動が沸き上がってきます。最初この削り取った木片をこのまま塔に保存しようと考えました。しかし時代が過ぎいわれが解らなくなってしまえば、廃棄される可能性が生じます。
 薬師寺は昭和43年よりお写経勧進を始め、54年目を迎えました。今では「お写経と言えば薬師寺」「薬師寺と言えばお写経」とまで評価され認識して頂いています。そこで削り取った心柱の木片をお写経用紙に漉き込んで頂き、お釈迦様の45年間に亘る教えを纏めた『舎利和讃』をお写経して、東塔にお戻しする事に致しました。令和に命を育むそれぞれの願いや祈りの真心を、未来に伝える事が出来ると確信しています。ご納経頂いたお写経は国宝東塔にお祀りし、一人でも大勢の皆様とともに落慶法要を勤め喜びを分かち合いたいと念じています。

 「国宝東塔四相像結縁特別写経」は、心柱の木片を漉き込んだ特別のお写経用紙に『舎利和讃』を書写して頂きます。ご家族ご友人にもお勧め頂き、多くの皆様とのご結縁を願っています。お一人で何巻でもお写経して頂けます。お納め頂いた特別写経は、国宝東塔内納経所に奉安致します。ご希望の場合は、お電話または薬師寺公式ホームページのトップページ「お知らせ:国宝東塔四相像 結縁特別写経勧進のお知らせ」より詳細をご確認ください。

合 掌



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