子どもの頃のお正月は、氏神様に初参りし、お雑煮を食べた後、家族揃っての「かるたとり」が楽しみでした。
 「いろは」は「伊呂波」や「以呂波」と書き、手習詞歌の一つで、発音の異なる仮名47字を平安中期頃に七五調の歌にしたものです。
 いろは歌の内容は『涅槃経』雪山偈が原点で、全てのものは無常であり、生滅を繰り返すという佛教の基本的な教えです。

  諸行無常しょぎょうむじょう 色は匂へど 散りぬるを
  是生滅法ぜしょうめっぽう  我が世 誰ぞ常ならむ
  生滅滅已しょうめつめつい  有為の奥山 今日越えて
  寂滅為楽じゃくめついらく  浅き夢見じ 酔ひもせず

 いろは歌は娯楽の道具として、江戸時代後期に「いろはかるた」となりました。最後に「京」を加え48字を頭文字にして内容を絵解きして絵札にしました。最初は上方で始まり、江戸に移って流行しました。尾張は上方と江戸とが混じり合って「尾張かるた」として親しまれています。諺やたとえなど48文字を最初の一文字に詠み込んで、言葉が軽妙で日常生活の規範となると共に、一家団欒の楽しみとして親しまれています。
 カルタは、ポルトガル語の「carta」を音訳して「歌留多」となり、それぞれの句を読み上げて、取り手がそれに見合う札を多く溜めたものを勝ちとする遊びです。

 いろはかるた一覧

  い 犬も歩けば棒に当たる  一寸先は闇
  ろ 論より証拠 論語読みの論語知らず
  は 花より団子 針の穴から天を覗く
  に 憎まれっ子世にはばかる 二階から目薬
  ほ 骨折り損のくたびれ儲け 佛の顔も三度
  へ をひって尻窄しりすぼめる 下手の長談義
  と 年寄りの冷や水 豆腐にかすがい
  ち 塵も積もれば山となる 地獄ぢごくの沙汰も金次第
  り 律義者の子沢山
  ぬ ぬかに釘
  る 瑠璃るり玻璃はりも照らせば光る 類をもって集まる
  を 老いては子に従え 鬼も十八
  わ れ鍋にじ蓋 笑う門には福来る
  か 蛙の面に水
  よ よしずいから天井覗く 夜目遠目笠のうち
  た 旅は道連れ世は情け 立て板に水
  れ 良薬れうやくは口に苦し
  そ 総領そうりょうの甚六 袖すり合うも他生の縁
  つ 月とすっぽん 爪に火をともす
  ね 念には念を入れよ 猫に小判 寝耳に水
  な 泣きっ面に蜂  習わぬ経は読めぬ
  ら 楽あれば苦あり 来年の事を言えば鬼が笑う
  む 無理が通れば道理が引っ込む 昔とった杵柄 むまの耳に風
  う 嘘から出たまこと うじより育ち
  ゐ 鰯の頭も信心から
  の 喉元過ぎれば熱さを忘れる
  お 鬼に金棒 負うた子に教えられて
  く 臭いものに蓋をする 果報くゎはうは寝て待て
  や 安物買いの銭失い
  ま 負けるが勝ち 蒔かぬ種は生えぬ 待てば甘露かんろの日和あり
  け 芸は身を助ける
  ふ 武士は食わねど高楊枝
  こ 子は三界の首っ枷 志は松の葉
  え 得手えてに帆を揚げ 縁の下の力持ち
  て 亭主の好きな赤烏帽子あかえぼうし
  あ 頭隠して尻隠さず 阿呆につける薬はない
  さ 三遍回って煙草にしょ 触らぬ神に祟りなし
  き 聞いて極楽見て地獄
  ゆ 油断大敵 幽霊の浜風
  め 目の上のこぶ
  み 身から出た錆
  し 知らぬが佛
  ゑ 縁は異なもの味なもの 縁の下の力持ち
  ひ 貧乏暇なし 瓢箪ひょうたんから駒が出る
  も 門前の小僧習わぬ経を読む 餅は餅屋 桃栗三年柿八年
  せ 急いては事を仕損じる 背に腹は代えられぬ 梅壇せんだんは双葉より芳ばし
  す すいは身を食う 雀百まで踊り忘れぬ 墨に染まれば黒くなる
  京 京の夢大阪の夢

新年に家族揃ってカルタ取りをしてみませんか。

合 掌



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