佛教教団の秩序を保つために、基本となる4つのパーラージカ(波羅夷罪)があります。これらを犯すと教団から追放される最も厳しい戒で、生き物を殺さない事(不殺生ふせっしょう)、 不与取とも言い、与えられていない物を取らない事(不偸盗ふちゅうとう)、男女の間を乱さない事(不邪淫ふじゃいん)、 嘘を付かない事(不妄語ふもうご)です。 サンガ(僧伽)の和合や修行のあり方を乱し、人心を惑わすような行為に及んだ場合に、その罪を受けます。パーラージカは重罪で、犯したものは教団から追放されるほど絶対犯してはいけない悪業です。
 特に「不殺生」は、4つの内第1に掲げられ、命の尊さを大切にする佛教の教えの基本が説かれています。 この戒を破った際には、全ての資格が剥奪され、佛教教団から追放されて佛教徒では無くなり、2年間一切の宗教活動を中止しなければならない重い罪です。 また、後に罪を悔い改めたとしても、佛教徒に戻ることは許されますが、再び出家者である僧侶となることはできません。

 今年2月、スリランカで世界で1本しかない木を「出家」させて伐採回避に僧侶が協力するという記事を見ました。スリランカに「スリランカレグメ」と呼ばれ、1868年に初めて確認されましたが、1911年を最後に見られなくなり、2012年に絶滅が宣言されたマメ科の木がありました。 ところが、2019年、コロンボの北で高さ8メートルの「スリランカレグメ」が1本だけ生えているのが見つかりました。 この木は中部の巡礼地キャンディに向かう高速道路建設のために切り倒されることが決まっていたため、環境活動家らが支援を求めていました。スリランカの僧侶数人が、この木を伐採から救うために、木の幹にオレンジ色の袈裟を巻き、お経を唱え、聖水をかけ、 「この木は今、象徴的な意味で僧侶となった」と宣言しました。人口の大半が佛教徒のスリランカでは、聖なる木を傷つける(殺生をする)と呪われると信じている人も多いので、木は保全されるかもしれません。
 人類だけが命ある尊いものと考えていますが、動物も、鳥類も、昆虫も、魚類も、植物も全てが地球を共有し共存する尊い生き物です。そのいただいた尊い命を大切にする教えが佛教の教えです。

合 掌



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