昔、身体は一つ、頭が二つある鳥がいました。この双頭の鳥を共命鳥と呼んでいます。共命鳥は極楽浄土に棲み、美しい羽根を持ち、妙なる声で囀ると伝えられています。 一羽の名前をカルダ、もう一羽の名前をウバカルダといい、一羽が起きている時はもう一羽は眠っています。
 ある時、カルダはウバカルダが眠っている間に摩頭迦という美味しい果樹の花を食べました。カルダは摩頭迦の花を食べる事は二羽共に満腹になると思ったのですが、ウバカルダは目を覚ました後、 カルダが美味しい摩頭迦の花を自分だけ黙って食べたことに腹を立て、怒りの思いを起しました。怒りの思いを抱き続けているウバカルダは、腹いせに毒花を食べ恨みを晴らそうとしました。
 ある時、毒花が咲いていました。怒りの思いを抱いているウバカルダは、この毒花を食べてカルダに恨みを晴らそうと考えました。ウバカルダは、カルダが眠っている隙を狙って毒花を食べました。ウバカルダが毒花を食べた事に気付いたカルダは、 「以前摩頭迦の花を食べた事にウバカルダは恨みを持ちました。貪りや怒りや愚かさには徳はありません。この様な愚かな行動と心は、自らを傷つけるだけでなく、多くの人々まで巻き添えにし、全ての人を不幸にしてしまうからです」 と語った後、二羽共に命を落としてしまいました。
 一羽が右へ行こうとすると、もう一方の一羽は左へ行きたいと言い、一羽が遊びたいと言えば、もう一方の一羽は休みたいと、その都度反対の意見を持ち、衝突して怒りの念を増長させる愚かな行動を重ねます。 身体が一つなのに頭が二つあるが故に生じる感覚や思いの違いが様々な葛藤や愛憎を引き起こし、やがて自分自身も滅ぼすという悲しい結末に繋がりました。
 佛法の有り難さに出会っていても気付くことなく、自身の三毒の煩悩(貪欲と瞋恚しんいと愚痴)でお互いに傷つけ合うばかりです。私たちの多くは、自分の姿に気付く事がないまま身勝手な行動を繰り返す事により、破滅に繋がります。 お釈迦様の教えが私たちに幸せを与えて下さる事を認識しなければなりません。

合 掌

このお話は『雑宝蔵経ぞうほうぞうきょう』『佛本行集経ぶつほんぎょうじっきょう』に説かれています。



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