般若心経の登場人物は、お釈迦様、観自在菩薩様、舎利子様、その他多くのお弟子様です。多くのお弟子様がお釈迦様を囲んで修行をされていました。そのお弟子様の中で、観自在菩薩様がご自身の修行の成果を「般若の行によって、静かな安らぎの境地を得ることができ、 そこに至ることができました」と舎利子様初め、お弟子様にお話をされました。お釈迦様から、「修行の成果がとても素晴らしいものであり、そしてまた実践に優れたものである」とお言葉があり、多くのお弟子様が、「私たちも般若の実践を致します」というのが、 『般若心経』のあらすじです。これは一字一句の語句を解説した訳ではなく、全体の流れの纏めです。
『般若心経』は、262文字の短い教えですが、佛教の神髄が込められています。 幸せを得るためには何をどうすればいいか、ということと、お釈迦様の教えの基本は何かということです。
「この世の中で全ての出来事は、必ず原因があり、縁が働いて結果が生まれる。奇跡は起きない」ということを最初にお説きになった方がお釈迦様です。原因と結果の関係を「縁起の法」と申します。
 例えばここに一つの花の種があったとします。この花の種が、そのままであったならば、いつまで経っても花の種のままです。この花の種からどうすれば花を咲かせることができるか、と言うと蒔いてやらなければいけない。 蒔いたらそれで花が咲くか、と言うと、種に水をかけてやり、そして太陽の熱があって、やっと芽が出てくる。必ず芽が出るかというとそうではありません。水の多い少ない、温度の高い低い等条件が整わないと芽が出ません。 それでは芽が出たらそれで花が咲くかと言えば、それを育ててやらなければ花は咲きません。ですから縁は、条件です。種は原因。その原因である種に、条件である水や太陽の熱という縁が加わって結果として花が咲くということです。縁が欠けたら生まれない。 「縁欠不生えんけつふしょう」ということです。
 私たちは自分の身勝手なことばかり考えますが、『般若心経』は、「この現実をもっとしっかりと見なさい」と説いています。全てを否定するのではなく、煩悩に満ち溢れていることをしっかりと認識した上で、自分はどうしたらいいのかを素直に深く考え、 正しい行いを実践する。
煩悩を無くせと言っても無理なことです。煩悩を繰り返し繰り返し続けているから、私たちは迷っているのです。人間である以上迷いをなかなか消すことができません。ですから迷いを否定するのではなく、 自分自身はこんなに弱い人間だと言う事を自覚してお互いに支え合う心豊かな人間性が大切で、煩悩はあってもそれを乗り越えたところに安らぎの境地が現れてきます。 。

合 掌



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