ジャッカルという動物を知っていますか。山犬のことで、山ばかりではなく森にも村にも棲んでいました。弱虫で、
ある時、獅子は鹿を捕まえてお腹いっぱい肉を食べました。それを見ていたジャッカルはお腹が空いていて、残った肉だけでも食べたいので、獅子の処へ行き「どうぞ僕を獅子さんの家来にして下さい」と頼みました。獅子は「わかりました家来にしてあげよう、付いてきなさい」と。ジャッカルは獅子の食べ残しを貰うために目まぐるしく動きました。お蔭でジャッカルは、毎日腹一杯食べ物に在り付くことができました。
ご馳走ばかり食べているので、ジャッカルは丸々と太ってきました。すると何だか自分も偉くなったような気持になり、獅子に提案しました。「獅子さん、毎日食べ物を分けてくれてありがとう。今日は僕が象を取ってくるから、休んでいてください」。獅子はビックリしました。「象はとても大きくて長い鼻を持っている。お前なんかに捕まえることができる筈がない。生意気なことを言わないで、おとなしく待っていなさい」。
それでもジャッカルは獅子の言う事を聞かないで、森を抜け出しました。山の上から見下ろすと、象がのっしのっしと歩いています。思い上がったジャッカルは、エーイとばかり象をめがけて飛び降りました。見当が外れて、象の足元に落ちてしまいました。すると象は前足を挙げてジャッカルの頭を踏みつけ、一声啼くと森の中へ入って行きました。その有様を見ていた獅子は、「バカなジャッカルだ。自分でも象を捕らえることができると思い込み、山から飛び降りはしたけれど、踏みつけられて息も絶えてしまった。身の程を弁えず皆に褒められようとしても、できない事はしてはならない」。
これは、『南伝大蔵経
象よりも強いと思い込み、命を落としてしまったジャッカルにならないよう、日頃の修行を通して、冷静な判断力を身に付けなければなりません。
合 掌
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