お釈迦様の説法のことを「
『ジャータカ物語』に「ライオン(師子)とトラ(虎)とジャッカル(山犬)」のお話があります。
昔、ブラフマダッタ王が治めていたカーシ国に大きな森がありました。そこには、ライオンのスダータとトラのスバーフとジャッカル(山犬)が住んでいました。ジャッカルはライオンとトラに取り入って、食べ残しをもらって暮らしていました。毎日ご馳走を食べることが出来るので、丸々と太っていました。今日もジャッカルはご馳走を腹一杯食べたのですが、「今まで色々な肉を食べたけれど、ライオンとトラの肉は食べたことがない。喧嘩をさせて2頭とも共倒れになれば食べることができるぞ」と思い付きました。ジャッカルは早速、ライオンのスダータのところへ出掛けて「トラのスバーフはライオンの悪口を言っている」と伝えました。するとスダータは、「帰れ帰れ、親友のスバーフはそんなことを言うトラではない」とどなりつけました。ジャッカルは、次にスバーフのところへ出掛け、同じように悪口を伝えました。驚いたトラのスバーフは直ぐにライオンの処に行って訊ねました。
「親友のスダータ、貴方はほんとうに悪口を言ったのですか」。スダータは、「親友スバーフよ、心卑しいジャッカルは同じことを私にも言いに来ました。スバーフと私は友達で楽しい日々を過ごしていましたが、もしも平和な日々を壊す気ならば、もう二度とスバーフに近づかない。悪口に疑問を持たず簡単に信ずれば、友達をなくし敵ができる、友を疑う輩は友じゃない」。
友情がいかに大切なものであるかということを教えてもらったスバーフは、大いに感激してジャッカルの言葉を信じた自分の浅はかさを恥じ、心からスダータに謝りました。
悪巧みに失敗したジャッカルは、2頭の怒りを恐れて遠い場所に逃げ出しました。その後、ライオンのスダータとトラのスバーフは仲良く森で暮らし続けました。
このお話に登場するライオンは「智慧第一」のサーリプッタ(舎利弗)であり、トラは「神通第一」のモッガラーナ(目連)の前世の姿です。2頭を
世間では悪巧みを企てる出来事が沢山あります。たとえ信じあう仲であったとしても、一つの言葉で疑いが生まれるのが人の心で、何事も本音で話し合えるのが真の仲間です。このお話は、信じ合う心の大切さを教えて下さっています。
合 掌
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