イソップ
イソップに登場する「二匹のヤギ」のあらすじは、狭い橋の中央で、頑固で真っ直ぐに進む性格の白いヤギと、せっかちでいつも自分中心の黒いヤギが出合いました。どちらも自分の進む道を譲りたくないので、橋の中央で立ち尽くし進むことができません。動けない事に気が付いた賢いヤギは、道を譲ることにしました。その結果お互いに橋を渡ることができました。譲り合って相手を思い遣るゆとりと優しさが、問題を解決する事になり、お互いに協力する事が大切であることを教えています。意見や感情の行き違いは、よく発生するものです。他者に対する思い遣りと労わりの心が大切です。
また、お釈迦様の前世の因縁を明かしたジャータカ物語(本生譚)にイソップ寓話と共通するお話が登場します。しかしどちらがどちらの物語に影響したかは定かではありません。
ジャータカ物語では「二人の王様」とか「二つの馬車」の題名で紹介されています。
昔々、ベナレスのブラフマダッタ王子が父王の後を継いで国を治めていました。新しい王様も正しい公平な政治を司っていました。コーサラ国のマリカ王も正しい公平な政治を司っていました。二人の王様は国民の生活を視察に出掛けました。二人の王様の馬車は細くなった道の谷に架かる橋の上で、ばったりと出会いました。
やがていい考えが浮かびました。そこで、二人の王様の年齢を比べて年下の王様が道を譲ることにしましたが、二人の王様は同じ年齢でした。お互いの王様の治めている国の広さも財産や名声も同じ位であることが分かりました。どちらが先に渡るのかなかなか決まりません。
そこで王様は昨日何をしたのか、お互いに語りました。マリカ王は庭のクジャクを虐めた事を正直に話しました。ブラフマダッタ王は困っている人に美味しい食べ物を布施したことを話しました。これでようやく先に渡る王様が決まりました。ブラフマダッタ王はマリカ王に、国民に対する布施や慈悲の心の大切さを懇ろにお話になりました。
二人の王様が深く争うことなく、お互いを認め合って道を譲ったことは、日頃から正しい公平な政治を司っている実績が齎した立派な行動です。
合 掌
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