紀元前6世紀、インドに命を受けられたゴータマ・シッダールタ(お釈迦様)は、6年間の修行を積みお悟りを開かれました。人の心の在り方を重んじ、修行によって怒りや苦しみ、悲しみ等、心の悪い状態から、楽しみの満ち溢れる清らかな喜びの状態に変えて行く事で、不安や悩みを無くし、幸せで心豊かな暮らしを送る事を目的にしています。このお導きを45年間に亘り正しい心の種まきをされました。その開祖がお釈迦様であり、教えを佛教と呼んでいます。
 初期インド佛教の教えの内容は『法句経(ダンマ・パダ)「真理の言葉」』第一章「雙要そうよう」の第一偈と第二偈に次のように説かれています。

 一 ものごとは心にあおられ、心に左右され、心によってつくり出される。
   もし人が、汚れた心で話し、行動するならば、その人には、苦しみがつき従う。車輪が、荷車をく牛の足跡につき従うように。
 二 ものごとは心に煽られ、心に左右され、心によってつくり出される。
   もし人が、清らかな心で話し、行動するならば、その人には、幸せがつき従う。影が、からだを離れることがないように。

今枝由郎訳




 苦しみも楽しみも全て心の在り方によって作り出されると説かれています。
教えの根本は、苦しみの輪廻からの解脱を目指すもので、原因があり、縁が働いて結果が生まれる「縁起の法」であり、奇跡は起きないと説かれています。来世に輪廻する六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天人)の生まれ方も心の産物に他なりません。心は迷った世界を作り出すと同時に、清らかな悟りの世界も作り出すと説いています。この二つを合わせると迷い苦しむのも、迷いから解放されて悟りに至るのもどちらも心の在り方次第ですから、菩薩(お釈迦様の正しい教えの実践者)としての修行を重ね、心の在り方を調える事が大切です。
 心が汚れたままであるならば、全てのものを正しく認識する事も出来ないし、いつまでも苦しみがつき従う事になってしまいます。「だから心を清らかにせよ。そして謹んで修行せよ」と教えて下さっています。

合 掌



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