大乗佛教の空・般若思想を説いた経典の一つである『般若心経』は、お釈迦様がお悟りになったサンスクリット語の「縁起の法」を262文字に漢訳されたものです。縁起の法とは、全ての現象は、「原因」があり「縁(条件)」が働いて「結果」が生まれる。この世の中に「奇跡」は起きないと「真理」をお示しになられました。
 縁起の法の基本は、
 「これあるが故に彼あり これ生ずるが故に彼生ず
 これなきが故に彼なし これ滅するが故に彼滅す」
 小部経典『自説経』(菩提品)に説かれています。

 経題を五つの言葉に分けると、①摩訶まか ②般若はんにゃ ③波羅蜜多はらみつた ④しん ⑤きょうとなります。①摩訶は、「大いなる」②般若は、「智慧によって」③波羅蜜多「幸せをいただくための」④心「中心となる」⑤経「教え」です。
 そして『般若心経』には、お釈迦様をはじめ観自在菩薩様と舎利子様とその他多くのお弟子様が登場します。
 あらすじは、多くのお弟子様がお釈迦様を囲んで修行していました。その中で、観自在菩薩様がご自身の修行の成果を、舎利子様をはじめ多くのお弟子様にお話しをされました。その内容は、般若の行を実践する事により、静かな安らぎの境地に到った事についてのお話でした。また呪文を繰り返し唱えることが、とても大切であることを教えられました。そしてお釈迦様によって、その成果が素晴らしいものであり、また実践に優れたものであるとのお諭があり、多くのお弟子様は般若の行の実践をされました。

 凡夫ぼんぶである私達には、幸せを邪魔する心の鬼が存在します。判断を誤らせる間違った認識です。心を上から覆い隠す五種の煩悩のことで「五蓋ごがい」といいます。
 五種とは①とん ②じん ③掉挙じょうこ ④惛沈こんじん ⑤の五種類です。①貪はむさぼり。 ②瞋はいかり。 ③掉挙は心がざわざわして、静寂でないことです。 ④惛沈は心が滅入って塞ぎ込み、重く暗い状態です。 ⑤疑はためらい心を覆って、善を生ぜしめないことです。
 五蓋が齎す鬼は、①恐怖くふ ②顛倒てんどう ③夢想むそうという産物を生みだします。①恐怖の「恐」も「怖」もびくびくする恐れです。 ②顛倒は理に反し、迷っている見方・あり方です。是を非とし、非を是とする逆さまなる考えです。③夢想は夢に見た事柄で、怖れです。

 静かな安らぎの境地とは、観自在菩薩は、般若行を実践する事により一切苦厄を度す事が出来ました。菩提薩埵は、般若行を実践する事により涅槃を究竟する事が出来ました。三世諸佛は、般若行を実践する事により阿耨多羅三藐三菩提を得る事が出来ました。観自在菩薩様も菩提薩埵様も三世諸佛様も般若行を実践する事により、悟りに至る事が出来たのです。
 だから羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆呵と繰り返し唱えることがとても大切です。声高らかにお唱えしましょう。