「竜」(りゅう・りょう)は、中国神話の生物。伝説上の生き物。古来神秘的な存在として位置づけられてきました。天子、優れた人、大きい、明らかという意味があり、旧字体は「龍」ですが、文字は「竜」の方が古く、甲骨文字から使われています。
 竜は神獣・霊獣であり、麒麟・鳳凰・霊亀とともに「四霊」のひとつとして中国では皇帝のシンボルとして扱われました。水中か地中に棲み、その啼き声によって雷雲や嵐を呼び、また竜巻となって天空に昇り自在に飛翔するといわれています。
 南宋時代の博物誌『爾雅じが』に竜の姿は、首〜腕の付け根〜腰〜尾の各部分の長さが等しく、角は鹿、頭は駱駝、眼は鬼(幽霊)あるいは兎、身体は蛇、腹は蜃、背中の鱗は鯉、爪は鷹、掌は虎、耳は牛に似るといわれています。また口辺に長髯をたくわえ、喉下には一尺四方の逆鱗があり、顎下に宝珠を持っています。竜の産んだ卵(宝珠)の中には、皆さまの夢や希望が詰まっています。秋になると淵の中に潜み、春には天に昇るといわれています。
 竜には9匹の子どもがいて、成長しても竜にはなりません。それぞれ特異な才能を発揮して親竜を助け、人間界に親しまれています。後に人間世界も複雑になり、9子では忙しくなり、更に4匹の子どもをもうけ13匹になりました。

①贔屓(ひき、びし)
 形状は亀に似る。重きを負うことを好む。力持ちで何処へ行くにも重い荷物を背負う。
 亀と何が違うのかよくわかりません。
②螭吻(ちふん)
 形状は獣に似ている。遠きを望み四方を見渡す。波を起こし、雨を降らし、火災を防ぐ。
 名前を変えて鴟尾(しび)と呼ばれることもある。
③蒲牢(ほろう)
 形状は竜に似ているが、体は小さい。
 吼えることを好むことから梵鐘の上に置き、鐘を撞くとよい音が出るように願った。(梵鐘の竜頭)
④狴犴(へいかん)
 虎に似ていて、正義の味方である。牢獄の門の上から下を睨み、佛教でいう閻魔大王の様なもの。
⑤饕餮(とうてつ)
 首はあるが体はない顔だけの竜で何でも食べる食いしん坊。大食漢で美食家。
 その為青銅器の鼎や杯、食器の飾りに多く使用される。
 財産を傾けてまで飲食する人を「饕餮の徒」と戒めている。(銅製鼎の模様)
⑥睚眦(がいし、がいさい、やず)
 竜に似ているが凶暴で殺すことを好む。
 武具の装飾(鎧の袖口・ベルトのバックル)に多く用いられる。
⑦狻猊(さんげい)
 形状は獅子に似ていて2本の角を持ち鬚を生やしている。
 煙や火を好み、香炉の脚部で座るのを常としている。(香炉の足)
 偉いお坊さんを「猊下げいか」というが、この「猊」は佛様の座る処。獅子座のこと。転じて高僧の座席。
⑧椒図(椒圖、しょうず、じょくと)
 形状は貝にも蛙にも似ている。
 温和な性格で、扉の上に描かれ(ドアノッカーの装飾)悪の侵入を防ぎ安全を守る。
 口をしっかり結んでいるので門番の役目。
⑨囚牛(しゅうぎゅう)
 末っ子の囚牛の体は黄色で小粒。天界の規則を度々犯し、親からも見放され人間界に落とされる。
 また殊の外音楽を愛したので弦楽器(琵琶・二胡)の頭部に飾られている。

⑩蚣蝮(虫八 虫夏 𧈢𧏡・はか)
 蚣はむかで、蝮はまむし。
 水を好み橋を守り水害が人々に及ばないよう川を跨ぐアーチ状の最上部に飾る。
⑪嘲風(ちょうふう)
 冒険を好み、危険な所へも平気で登り、遠くを眺めて見張り役をしている。
 大きな三日月型の角が特徴である。屋根の先端や高い塔の壁に居る。
⑫負質(ふしつ)
 文字を好む。石碑の上部に頭部を左右下向きにして片足で玉を抱き、文字を見ている。
 石碑の前後に四竜として彫刻されている。
⑬螭首(ちしゅ)
 建築物の四隅に居て、水平に頭をもたげ足で踏ん張って口から水を噴出する。
 池の導入口にもよく見かける。防火に勤めている。(石製雨樋の注ぎ口)

 辰歳に因んで、身近で活躍している辰(竜)の子どもを探してみてください。

合 掌



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