昭和50年正月、東京都品川区東五反田に薬師寺東京別院が発足しました。昭和4年(1929)宅地分譲が行われ、現在も山の手の高級住宅地「池田山」と呼ばれる閑静な地域にあり、香道を嗜んでおられた山本伽耶刀自が、香道の普及を薬師寺に託してご自身の邸宅をご寄進くださいました。以来、お写経道場として使用させていただいております。

 昭和初期に建築された風格ある和風建築でしたが、70余年の歳月が過ぎ、度々小修理が必要であった為、平成15年、思い切って改築することになりました。1階の玄関から階段を上がって頂くと、お薬師様をご本尊として祀る本堂、3階は山本伽耶邸の書院を復元した建築物となり、20年が経過しました。本堂は約50人の方が、いつでもお写経が出来る広さで、お写経のみならず法話会場として、改築以来大勢の皆様に安らぎをお受け頂いています。改築された本堂の壁面には、過去佛としてお釈迦様、現在佛としてお薬師様、未来佛として阿弥陀様のそれぞれ千体の佛様、合わせて三千佛をお祀りしています。この過去現在未来の三世に渡る信仰は、ご先祖様から未来の子孫に続く人生観や世界観です。

 近年は、自己主張が強くなるに伴い、人を批判する事ばかりで、不信の毎日です。他人を批判している本人は、憂さ晴らしができ心地よいかも知れませんが、その言葉を聞いている周りの人々は、不愉快です。そのことを理解せず不平不満の世の中です。
 お釈迦様は「他人のよこしまを見る莫れ。彼が何を為し何を為さざるかを言う莫れ。我が何を為し何を為さざるかを思うべし。」と『法句経 第四品 華 五十』に説かれています。

 昭和50年正月より発足した薬師寺東京別院では、毎月12日の薬師縁日に、高田好胤管長様の「物で栄えて心で滅ぶ」幸せを頂く種まきとして法話が始まりました。以来今日に至り、お写経勧進と共に「心の安らぎ」「心のオアシス」として、日本の伝統文化を支える精神道場であり、お写経勧進をはじめ佛教の布教所として、大勢の皆様に愛されています。

 改築20年目に当たる11月22日と23日に、20周年記念の法要を勤めさせて頂きます。大勢のご参拝をお待ち致しております。

合 掌



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