中秋の名月は、旧暦の8月15日に月を愛でる行事で、令和5年は、9月29日がお月見です。いつの頃からか金色こんじきに輝く月を愛でながら、収穫の喜びや、自然の美しさを「十五夜」とか「お月見」「観月」として楽しんできました。ちょうどその時期が里芋の収穫期であることから、十五夜のことを「芋名月」とも呼んでいます。更に翌年の豊作を願う祈りとともに、月の満ち欠けを農作業の指標としてお月様に込めていました。そして詩歌や管弦を楽しみながらお酒を酌み交わすといった優雅なものであったようです。お月見の宴の始まりは中国にあると言われますが、定かではありません。

 中国ではお月見に月餅げっぺいをお供えしますが、日本に伝わり、月見団子に変わりました。お供えする団子の数はその年の旧暦の月数、平年は12個、閏月のある年は13個お供えします。供えられている団子はこの日に限って盗んでもよく、こどもたちは竿の先に釘や針金をつけて、お団子を盗みに行きました。こどもはお月さまからの使者と考えられていて、お供えする側も縁側の盗みやすい位置に団子を供えました。現在でも「お月見くださ~い」「お月見泥棒で~す」「団子突かせてぇ~」と声をかけて各家を廻り、団子やお菓子をもらう風習が伝えられています。

 月見団子と共に供えられるのがススキです。十五夜の後、ススキを藏の入り口や収穫物そのものに挿すのは、葉がのこぎり状になっていて、うっかり触ると手を切ることから邪気を払い、一年間無病息災となるよう願いが込められていました。
 「すすき」は草が生い茂る様子を形容する表現で、沢山群がって茂って生える草の状態の総称です。本来はススキの固有名詞ではありませんでした。多年草で土手や荒地などに大群落を作ります。高さは2メートルにもなり、葉は尖り、細かい鋸歯のこぎりばがあります。秋に黄褐色の花穂をつけ、茎葉は屋根を葺く材料として用います。茅葺の家も少なくなりました。また袖振草そでふりぐさともいいます。
 語源は「すくすく生いたつ」草とか「進草【すすき】」「直々草【すくすくき】」「清々草【さやさやき】」「スズ【清浄】ケ【稲の類の草】」等色々です。清らかに澄んだ青々とした色や、素直にすくすくと伸びることに由来していようです。「ス」は「」で、そのままであること、それが群生しているから重ねて「スス」とし、「キ」は草の意味で、群がり茂る草を意味しています。また「尾花おばな」はススキの花穂のことで、花が獣の尾に似ているので尾花といいます。

 主役のお月様に戻して、一日を新月、ついたち。三日を三日月。七日を上弦の月、弦月ゆみはり。十四夜を待宵まちよい、小望月。十五夜を満月、望月。十六夜を「いざよい」。十七夜を立待月。十八夜を居待月。十九夜を寝待月、臥待月ふしまちづき。二十夜を更待月ふけまちづき。二十三日を下弦の月といいます。
 中秋の名月は、陰暦8月15日に愛でる月で、芋名月とも言います。陰暦9月13日のお月様を十三夜、後の月、栗名月といい、栗や枝豆をお供えします。十五夜のお月見だけをして十三夜のお月見をしない事を片月見といって名月を2回楽しみました。
 間違えやすいのが中秋と仲秋で、中秋は秋のまんなかで、陰暦8月15日一日のみのことです。仲秋は秋三ヶ月の内の秋。即ち陰暦の8月一ヶ月間のことです。

合 掌



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