季節に合わせて私たちを楽しませてくれるお菓子があります。1月は花びら餅、2月はうぐいす餅、3月は牡丹餅、4月は桜餅、5月は柏餅、6月は水無月等季節ごとに美味しいお菓子が続きます。

 「ぼたもち」と「おはぎ」は、お彼岸に頂きます。二つのお菓子の違いをご存じの方も多いと思いますが、牡丹の花が咲く春のお彼岸は「ぼたもち」、萩の花が咲く秋のお彼岸は「おはぎ」をお供えします。
 材料の一つである小豆は、赤飯せきはんにして様々な祝祭事に使われ、農作業が始まる春彼岸には「ぼたもち」を作り、収穫の時期に当たる秋彼岸には「おはぎ」を作ることで、神様をはじめ天地自然のお恵みに感謝し、風雨順次、五穀豊穣、万民豊楽を願ってご先祖様のみたまに思いを馳せ、お彼岸に「ぼたもち」や「おはぎ」をお供えしました。
古来より「赤」は魔除けの色であるとされ、小豆と米の組み合わせは、ご先祖様と家族の心を合わせる(繋ぐ)という意味もあります。

 季節に合わせて呼び方を変えてもいます。「春は牡丹餅(ぼたもち)」、「夏は夜船(よふね)」、「秋はお萩(おはぎ)」、「冬は北窓(きたまど)」と呼んでいます。
「牡丹餅」や「お萩」は、杵と臼を使ってお米をかないので音がしないことから、いつしか「搗き知らず」となり、夜は暗くて船がいつ着いたかわからないことから「着き知らず」、それを「搗き知らず」と掛けて「夜船」と呼ばれるようになりました。
 また北向きの窓からは月が見えないことから「月知らず」、それを「搗き知らず」と掛けて「北窓」と呼ばれるようになりました。

 「牡丹餅」は牡丹の花のように大きな丸い形で作られ、「お萩」は、秋に収穫した小豆の皮もそのまま潰して餡にすると、皮の形が萩の葉の形に似ており、萩の花のように細長い俵型状で作ったりもするので「お萩」と呼びました。米の種類も餅米や粳米うるちまいであったり、こし餡や粒餡であったり、黄粉きなこをまぶしたりと地域によって様々ですが、「餡」と「米」の組み合わせは、身近で最高のお菓子です。
 自然のお恵みとご先祖様のお蔭を受け止めて味わえば、尊い命を頂いている有り難さや、ご縁の深さを感じることができますし、季節や行事を上手く取り入れることで、日常生活がより楽しく豊かなものになります。

合 掌



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