大賀ハス(オオガハス、おおがはす)
 昭和26年(1951)千葉市検見川(現・千葉市花見川区朝日ケ丘町)にある東京大学検見川厚生農場(現・東京大学検見川総合運動場)の落合遺跡の発掘現場で、3月30日の夕刻、花園中学校の女子生徒が地下約6メートルの泥炭層からハスの実1粒を発見しました。予定を延長し発掘作業を続けた処、4月6日に2粒、計3粒のハスの実が見つかりました。発見されたハスの実は、今から2,000年以上前の古代ハスの実であることが判明しました。植物学者でハスの権威者である大賀一郎博士は、そのハスの実の発芽育成を、5月上旬から自宅(東京都府中市)で試みられました。2粒は発芽しませんでしたが、3月30日に出土した1粒は育ち、翌昭和27年(1952)7月18日にピンク色の大輪の花を咲かせました。

『佛説阿弥陀経』に「極楽国土には、七つの寶の池有り。八功徳水が、其の中に充満せり。池の底には、純ら金沙を以て地を布けり。四辺に階道あり、金・銀・瑠璃・玻瓈をもって合成せり。上に楼閣有り、亦た金・銀・瑠璃・玻瓈・硨磲・赤珠・碼碯を以て、而も之を厳飾せり。池中の蓮華は、大きさ車輪の如し。青き色には青き光あり、黄なる色には黄なる光、赤き色には赤き光、白き色には白き光あり。微妙香潔なり。舎利弗よ、極楽国土は、是の如き功徳荘厳を成就せり」とあります。

蓮華には五つの徳があります。
① 淤泥不染おでいふぜんの徳
一般的に花は、陸地に咲いています。淤泥とは、淤も泥も泥田ということで、泥の中に咲いても、蓮の花も葉も泥に染まらず、美しい花を咲かせます。蓮の花は、泥水の中に生きて、泥水を吸って清らかで可憐な花を咲かせます。同じ事が人にもできる筈です。

② 一茎一花いっけいいっかの徳
多くの花は、一つの茎にたくさんの花を咲かせます。蓮の花は一つの茎に一つの花を咲かせます。一つの茎に一つの花しか咲かせません。
私の代わりは私以外にいない、ということを示しています。喉の乾きを代わることも癒すことも、トイレに行くことも代わることはできません。その人の反省や感謝の心も身代わりがききません。当事者だけが救いや学びや潤いを受けることができるということです。
身に付いた教養や芸術は、荷物になりません。どこでも出来るし、地震にも強い。泥棒にも取られないし、落としも致しません。

③ 花果同時かかどうじの徳
蓮の花は一度に開きます。花が咲くと同時に種ができています。実際には、花が咲くと同時に種ができるわけではありませんが、ここで重要なのは、植物学的な正しさではなく、そんな事を思わせる位、蓮の花は神秘的だということです。
花と実(果)は同時ということは、生まれた時から、既に佛性が備わっています。更に蓮の花は、目覚めた時一気に事が進む様が花果同時という意味です。

④ 一花多果いっかたかの徳
蓮の花は一つの花にたくさんの実をつけています。誰もが唯一無二の存在です。誰の代わりでもありません。自らの心をしっかりと持つ事が大切です。

⑤ 中虚外直ちゅうこげちょくの徳
蓮の花の茎の特徴です。茎は蓮根のように、中にいくつかの空洞があります。
これが中虚ということです。外直とは真っ直ぐということです。蓮の茎は外は硬いけれど、中は空洞です。その茎が空に向かって一直線に伸び、中虚とは蓮の茎は中に小さな穴が無数に開いていて弱そうなものの、実際は穴が開いている為に強い。外直とは真っ直ぐに伸びる強さのこと。それは、蓮の花が、極楽へ生まれる人の心の特徴を表しています。これを併せ持つ中虚外直も蓮の特徴です。

 この蓮の花の5つの特徴から、極楽へ生まれる事が出来る人の心を説明しています。蓮の花には佛が降りると言われています。蓮は泥の中からでも、綺麗な花を咲かせることができます。蓮はあの泥でさえも、栄養としてしまいます。
人も、世俗の混迷とした中からでも、美しい花を咲かせることができます。

泥沼を くぐりて清き 蓮の花
夏たけて 堀の蓮の 花見つつ 佛の教え 思う朝かな   昭和天皇御製

善学菩薩道 不染世間法 如蓮華在水 従地而踊出 皆起恭敬心 住於世尊前

善く菩薩の道を学して 世間の法に染まざること 蓮華の水に在るが如し
地より踊出し 皆恭敬の心を起して 世尊の前に住せり 『妙法蓮華経 従地涌出品第十五』

蓮は泥の中で育つけれども、その泥に染まることなく、綺麗な花を咲かせます。
私達もどのような厳しい環境にいたとしても、心の中は清浄に保てるということを表しています。

合 掌



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