佛教の実践において、最も重要なものの一つが戒律です。戒(サンスクリット語のśīlla)は行動を慎むための戒めであり、道徳であり、佛教に帰依きえした人が守るべき行いの規則です。また律(サンスクリット語のvinaya)は、僧侶の教団における規定で、佛教教団の生活規則です。
 佛教に帰依した人が守る基本的な五つの戒に五戒ごかいがあります。
 五戒とは、
   ① 不殺生戒(ふせっしょうかい)命あるものを殺してはいけません。
   ② 不偸盗戒(ふちゅうとうかい)他人のものを盗んではいけません。
   ③ 不邪淫戒(ふじゃいんかい) 邪な交わりをしてはいけません。
   ④ 不妄語戒(ふもうごかい) 嘘をついてはいけません。
   ⑤ 不飲酒戒(ふおんじゅかい) お酒を飲んではいけません。
の五項目で、自らの幸福を求めて、自主的に行い、戒を守ることによって自身に安楽をもたらす行動です。

 嘘とは、人を欺くために事実でない事を相手が信じるように伝える言葉であり、事実に反する事柄です。
 良く知られているイソップ童話に「狼少年」の嘘をつく子どものお話があります。
 羊飼いの少年は、退屈しのぎに悪戯いたずらをしたくなりました。突然大声で「狼が来たぞ」と叫んでみると、羊が襲われたら大変だと、大人たちが武器を持って大慌てで駆け出してきました。しかし狼は何処にもいません。それを見た少年は大声で笑いました。何日かして少年は、また大声で「狼が来たぞ」と叫びました。大人たちは今度も駆け出してきました。少年は大声で笑いました。少年はその後も懲りることなく嘘をついては、慌てる大人たちの姿を見て面白がっていました。ところがある日、本当に狼がやってきて、羊の群を襲いました。少年は慌てて大声で叫びました。「狼が来た、狼が来た」と。しかし大人たちは何度も嘘をつく少年の言うことを信じませんでした。大切な羊は狼に食べられてしまいました。
 この「狼少年」の童話は、くり返し嘘をついていると、たとえ本当の事を言っても誰も信じてくれなくなる事を教えています。嘘をつき続けるとやがて周囲の人々から信用されなくなってしまうという大切な教訓です。

 人は、常に正直に生活することにより他人から信頼と助けを得ることが出来るようになります。不必要な虚言をくり返すことは、何の得にもならないばかりか周囲の人に迷惑を掛けることになり、最終的には自分の身を滅ぼしてしまうことになりかねません。一度失ってしまった信用を取り戻すのはとても難しいことです。

合 掌



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