日本は四季折々豊かな自然に恵まれていますが、天然資源の中でも特にエネルギー資源の多くを外国に依存しています。国家の運営は、自国の都合で輸出入の規制や禁止の措置を講じる事により、利益を追求し安定を図ろうとしています。
 日本は歴史上他国から侵略される事がありませんでした。それは日本国民が勤勉で誠実な精神力が永年に亘り国家を支えてきたからだと思います。世界の諸国中で、大国か小国かの評価は、国土の面積や資源の豊富さで決められていません。世界の政治や経済を先導している国家は、天然資源に恵まれているかというとそうでもありません。世界が一流国家と認めている条件は、天然資源が豊富であることが第一条件ではなく、正しく公正な判断の下行動し、知的財産が豊富であることが信頼される最も大切な要件です。
 子どもの時は腕力の強い者や自己主張する者が優位となる事が屡々しばしばありました。子どもの時代はお山の大将が許されることであっても、成人となった瞬間から腕力や自己主張は役に立ちません。子どもと同じように腕力で束の間の勝利を得ようとしても国際社会から信用を失うだけで、とても残念な国家指導体制です。自作自演の悪業あくごうを重ねそれを相手の責任として押し付け、偽のレッテルを貼り自らを正義にすり替える。正に「勝ちさえすればいい。勝てば正義がまかり通る」という状態です。子どもが自分の目的のために駄々をこねて足をばたつかせ、親を困らせて欲しい物を手に入れようとする様子が手に取るように映し出されます。
 元々興味がなかった物事や人物に対して複数回接触を繰り返し、その内容に興味を持たせる心理的現象を「単純接触効果」と言います。ドイツのヨーゼフ・ゲッベルスは「嘘も百回言えば真実となる」と語っています。間違いを正しいと認識させることで「真理の錯誤効果」を狙っていて、例え嘘であっても繰り返し言い続ける事により、誰もが真実と感じるようになるという思考のすり替えです。だから一人一人が真実を見分ける冷静な力を身に付ける必要があります。
 世界観や人生観について人々は自説に固執して、各自が誤った理屈をひけらかし争って、真理を知ることなく世界や人生の一部分を不完全に自論としている凡庸ぼんようさは、暗がりを手探りで進んでいて間違った判断を続ける愚かな行為の基です。
 この蛮行ばんこうをお釈迦様は「無明むみょう」とお説きになっています。

合 掌



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