《金堂再建にかける夢》
「最小の効果のために最大の努力を惜しまない」。この言葉を信条にして高田好胤管長さんは昭和43年から一人ひとりのお写経納経料によって享禄元年(1528)に焼失後仮堂として再建された金堂を創建当初の姿に復興しようと「般若心経の百万巻写経による薬師寺金堂復興勧進」を始められました。今ではお写経というと「般若心経やその他のお経を自らの手で書写すること」と分かります。しかし、当時はお写経といっても何をすることか理解されていませんでした。極端な例では、「社会党と共産党」を短縮した「
大事業の成就はお写経をしてくださる皆様や、西岡常一棟梁をはじめとする宮大工さんや多くの工事関係者の力があればこそです。そして天地自然のお恵みを頂いて成長した樹齢千年を越えるヒノキの木材があったればこそ、白鳳の大伽藍が完成したのです。
大勢のご結縁者の力が重なり合い眼には見えない「おかげ」いわゆる
《受け取り方と活かし方》
お寺というと、お墓があってお葬式をして檀家があってと認識されている方が多いのですが、お釈迦さまはお亡くなりになった方ではなく、生きている我々に今日一日を如何に生きたらいいのか、幸せを頂く為の教えを示して下さいました。
物があるから幸せかというとそうではありません。それでは心さえあれば幸せかというとそうでもありません。お釈迦さまは、お経の中で物のことを「
《
「お経は見るだけでも功徳があり、声を出して唱えれば更に功徳があり、それを自らの手で書写すれば一文字書く毎に佛さま一体を刻むのと同じ功徳がある」と説かれています。そして「お写経をして心が落ち着いた」「お写経は心の洗濯機です。心の掃除機です」と感想を寄せて頂いています。薬師寺は檀家がありませんので檀家の方々にお堂を復興して頂くことはできません。そこでお写経をして頂いて2,000円の納経料を納めて頂きます。納経して頂いたお写経は薬師寺にお祀りされ、その浄財は白鳳伽藍復興に使わせて頂いています。
270文字ほどの『般若心経』は、国民のお経として親しまれているお経です。
物質は分ければ分けるほど小さくなりますが、幸せや喜びは分ければ分けるほど大きく広がります。苦しみや悲しみは分ければ分けるほど軽くなります。所詮人間は弱い者です。だから苦しみも悲しみも、喜びも幸せも分かち合って豊かな心を頂きましょうという教えが『般若心経』の教えです。この『般若心経』をご自身の手で書写して頂きます。でも書写しようとした瞬間、私たちの心が変わってしまいます。どう変わるのかと言うと、うまく上手に書いて誉められたいと…。お写経は書道ではありません。文字の上手下手ではなく心を込めて書写することが大切です。だから鉛筆でもいいのです。お経だから心が清らかになった時に書こうと思ったらいつまでたっても書けません。寧ろ腹が立った時にお写経でもしてやれと書いてみて下さい。心が清々しくなります。それがお写経の功徳です。
現在は混迷の世の中、こんな世の中に誰がしたのでしょう。誰でもない私達自身です。美しい心豊かな日本を汚してしまったのは誰なのでしょうか。そんなことを一日に一度でも考えて見て下さい。
今私達に出来る事は未来に向かっていい種を一つずつ蒔く事です。未来とは、私達の子供であり孫であり曾孫です。これから命を戴くであろう子供や孫や曾孫です。その子供たちこそが明日の日本を担ってくれる未来です。宝です。その子供達に何か素晴らしい夢を伝えることが私たち大人の役目ではないかと思います。
合 掌
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