苦の原因は人間の心の持ち方です。心の持ち方を変えることによって活かし方が変わり、あらゆる苦悩は消滅するでしょう。 渇愛をあっさりと切り捨て、執着を断ち切り解脱することができるのか。ただ捨て去って執着を断ち切り解脱しようとすると、更に拘りが増幅され、心の偏りや拘りから苦しみを増大させる結果となりかねません。
 「苦」の原因は「業」にあり、「業」の原因は「惑」にあります。そこで「苦」から逃れようとする為には、「業」を起さないようにしなければなりません。「業」を起さないようにする為には、「惑」を断ち切らねばなりません。 従って「惑」なければ「業」起こらず、「業」が起きなければ「苦」を招くことがありません。この「惑業苦」が全く無くなることを「滅諦」と言います。苦悩の束縛から解き放たれた理想の境地です。 滅諦とは物の滅した状態ですから「滅度」とか「円寂」と訳されています。様々な考えが盛んに表れて心を乱す迷いの煩悩を超え、彼岸の境地です。円寂とは煩悩の喧騒が全く取り除かれた圓満寂静の境地です。やはり彼岸の理想を表しています。 理想の境地とは、空寂の境地、苦境を超越した無上の楽土で、決して現世から逃避する事ではなく、現世における苦悩の熱気を滅却する事です。愛欲にまつわる忌まわしい迷妄生活を否定する事によって浄化された菩提心にいそしむことが本義です。
 干し柿は渋柿を寒風に晒すことによって甘味に代わります。「渋柿の 渋がそのまま 甘味かな」決して渋を抜きとって甘味を付けるのではなく、寒風という苦難を乗り越えた結果、渋がそのまま甘味に変化する様は、現世を否定するのではなく浄化して、 たゆまぬ正しい実践が真実で理想の世界を作り出します。
その実践方法を「道諦」で学びます。

合 掌



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