奈良佛教の寺院(奈良時代に建立された寺院。例えば法隆寺・薬師寺・東大寺等)は、毎月法要を勤めます。1月に勤める法要を修正会、2月に勤める法要を修二会と呼び、悔過けか法要を厳修し今に続いています。
 天武天皇の朱鳥元年(686)宮中悔過や持統天皇8年(694)5月11日の条に『金光明経』を諸国に送付し毎年1月上弦に読誦し悔過するよう詔が出された事が『日本書紀』に記されています。
 薬師寺で勤められる1月の修正会は吉祥悔過きちじょうけかが勤められ、2月の修二会は薬師悔過やくしけかが勤められます。薬師寺の修二会が花会式と呼ばれるようになったのは、嘉承2年(1107)堀川天皇が皇后の病気平癒を薬師寺修二会の薬師悔過法要に祈願され、 霊験を得て回復された皇后が、翌年宮中の女官と共に薬草で染めた和紙で造花を造りお供えされました。以来薬師寺修二会を花会式と呼ぶようになりました。椿・梅・桜・桃・山吹・牡丹・杜若・藤・百合・菊の十種、合計1696本の造花を12瓶に生けお供えします。
 出仕する僧侶は10人で、練行衆れんぎょうしゅうと呼びます。3月25日から3月31日まで1日6回の悔過法要を一・七いちしち日間勤めます。 意識無意識に犯している悪業あくごう(過ち)を国民に代わって懴悔し、国家繁栄・万民豊楽・天下泰平・風雨順次・五穀豊穣・病気平癒を薬師三尊様に祈願します。
 悔過とは、私たちが生きる上で過去に犯してきた様々な過ちを、本尊とする佛様の前で発露ほっろ懺悔さんげする(告白して許しを請う)ことです。
私たちは、無限の過去世から、本来的に貪瞋癡とんじんちと呼ぶ煩悩があり、これが原因で身体や言葉や思いを通して様々な間違いを犯しています。これらの罪過の積み重ねが結果として災禍を生み、災禍の原因である悪業(過ち)を佛様の前で懺悔し、許しを請うことにより、 災いの無い世界の実現を受け、幸福を頂く謙虚な心の悔過の作法を実践することが基本です。
 このようなことから、僧侶が悔過けか懺悔さんげの行を勤め、国民の罪過を取り除くと共に、四季の恵み、国土の安寧、国民の平和と幸福への願いを 讃佛礼拝さんぶつらいはいの行に祈り捧げるのが、悔過の行法ぎょうぼうです。 懺悔とは、それぞれの宗教における神や聖なる存在の前で、罪の告白をし、悔い改めること。自らが犯した罪や過ちを反省し、神佛や相手に許しを請い身心の苦悩から解放を求める宗教行為です。
 「どのような悪業あくごうを行うこともなく、様々な善業ぜんごうを行い、自らの行動により自らの心を浄らかにする、それが佛がみな口を揃えて説く教えの基本です」と『出曜経しゅつようきょう』 『法集要頌経ほうじゅうようじゅきょう』に説かれています。

合 掌



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