勤行ごんぎょうの際、薬師三尊様に蓮形の花弁はなびらを撒く散華作法さんげさほうがあります。散華とは、花を佛様に供養し、徳を褒め称えるための作法です。
清らかな世界、悟りの世界は、天から花が舞い降りるといわれています。佛様や菩薩様が衆生を讃嘆する為、天より花を降らしたという故事に因んでいます。勤行の初めに散華を行うのは、花の芳香によって悪い鬼神などを退却させ、道場を清め佛様や菩薩様を迎えるためとされています。 本来は蓮の花弁をはじめ生花が使われていましたが、四季を通して蓮や生花がある訳ではありませんので、蓮の形を模った色紙で代用することとなりました。
 平成21年より始められた薬師寺国宝東塔解体大修理事業は、令和2年12月をもって完成致しました。令和3年3月1日より東塔の初層特別開扉をさせて頂きます。 薬師寺国宝東塔は佛教の教えの元となる釋迦信仰を伝えるものであり、お釋迦様の叡智を祖師先住より引継ぎ、より良い形で後世に継承していくことは、昭和・平成・令和の世に命を頂いている私たちの使命です。 この度の解体修理は単なる塔の延命ではなく、貴重な日本人の宝を次の千年に引き継いでいく大事業であり、一山一丸となって取り組ませていただきました。おかげさまで一度の事故もなく本日を迎える事が出来ました。
 国宝東塔大修理が始められた折、完成に向け平成の日本の優れた絵画作品を「平成の宝玉散華」として集大成し未来に伝えたいと考えていました。 薬師寺の使命は佛法を広め人々の心を豊かにすることは勿論の事、現代を代表する諸先生による芸術美を後世に継承することも重要であると考えます。そこで、日本の美を追求されている先生に散華の形にしてお作品をご奉納賜り、東塔の1300年の命の再生に華をお添え頂きたくお願い申し上げました。 ご奉納頂きました40人の代表作を「平成の宝玉散華」として東塔初層開扉に伴い水煙特別公開会場にて原画展覧致しております。更に国宝東塔落慶法要に際し、荘厳の散華として使用させていただきます。
 薬師寺は、白鳳時代から諸行事を通じ文化、芸術の普及・復興に努めてまいりました。 薬師寺の宝物は祈りの対象でもあり、貴重な文化財として多くの信仰を集めております。1300年に亘る日本芸術の保存と継承を今後も積極的に行ってまいりたいと考えています。 そして、この度御奉納いただいた原画は「平成の宝玉散華」として大切に伝承させていただき、薬師寺の続く限り歴史に受け継いでいく所存です。

合 掌



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