お釈迦様は、最後の説法で和合衆わごうしゅうをお説きになられました。
お釈迦様は29歳で出家し、35歳の時成道して以来、45年間に亘り各地を遊行ゆぎょうされました。お釈迦様は、ラージャグリハ(王舎城)をあとに故郷へ向かわれクシナガラの地に至り、沙羅双樹の下で最後の説法を終え80歳の生涯をお閉じになられました。

 弟子たちよ、これまでお前たちのために説いた私の教えは、常に聞き、常に考え、常に修めて捨ててはならない。もし教えの通り行うならば、常に幸いに満たされるであろう。教えの要は心を修めることにある。だから欲を抑えて己に克つ事に努めなければならない。 身を正し、心を正し、言葉を真あるものにしなければならない。貪ることをやめ、怒りをなくし、悪を遠ざけ、常に無常を忘れてはならない。もし心が邪悪に引かれ、欲にとらわれようとするなら、これを抑えなければならない。心に従わず、心の主となれ。 心は人を佛にし、また、畜生にする。迷って鬼となり、悟って佛となるのもみな、この心の仕業である。だから、よく心を正し、道に外れないように努めるがよい。

 弟子たちよ、おまえたちはこの教えのもとに、相和あいわし、相敬あいうやまい、争いを起こしてはならない。水と乳のように和合せよ。 水と油のようにはじきあってはならない。ともに私の教えを守り、ともに学び、ともに修め、励ましあって、道の楽しみをともにせよ。つまらぬことに心を使い、無駄なことに時を費やさず、悟りの花を摘み、道の果実を取るがよい。

 弟子たちよ、私は自らこの教えを悟り、お前たちのためにこの教えを説いた。おまえたちはよくこの教えを守って、ことごとにこの教えに従って行わなければならない。 だから、この教えの通りに行わないものは、私に会っていながら私に会わず、私と一緒にいながら私から遠く離れている。また、この教えの通りに行うものは、たとえ私から遠く離れていても私と一緒にいる。

 弟子たちよ、私の終わりはすでに近い。別離も遠いことではない。しかし、いたずらに悲しんではならない。世は常に無常であり、生まれて死なない者はない。今私の身が朽ちた車のように壊れるのも、この無常の道理を身をもって示すのである。 いたずらに悲しむことをやめて、この無常の道理に気づき、人の世の真実の姿に目を覚まさなければならない。変わるものを変わらせまいとするのは無理な願いである。
この教えは『般泥洹経はつないおんぎょう』に説かれています。

合 掌



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