薬師寺の創建は天武9年(680)皇后である後の持統天皇の病気平癒を願って建立されました。この事は、日本書紀の巻29に登場します。
佛教の教えの四苦は生老病死です。人間の最大の苦しみの一つが
昨年12月、中国武漢市で発生した新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっています。日本でも4月7日に東京をはじめ7都府県で緊急事態宣言が発令され、国民には不要不急の外出自粛の要請が出されました。
これ以上の感染者の増加を減少に転じる措置として、宣言の発令は適切な判断であったと存じます。
6月19日には宣言が解除されたものの、世界中に拡散した感染症は一向に終息に向かう気配すら見せません。日頃から個々の健康管理の大切さが叫ばれています。
今まで例を見ない病気が発生した時に最も重要なことは、状況を冷静に観察し、正しい判断のもとに的確に処置する事です。判断を誤る事によって被害を拡大させ、取り返しのつかない大災害に発展する可能性があります。
現在問題となっている新型コロナウイルス感染症は、病魔の初期対策が遅れたため人々が不安を持ち、世界規模で拡大して大勢の尊い人命が失われてしまいました。
誰もが怪我をしたり、病気に
古来、日本人が礼拝している神様佛様は豊穣をもたらすものであり、その御宝前で懴悔声明し悔過する事により穢れを祓い退け、疫病退散、万民豊楽、天下泰平、風雨順次のご利益を享受してまいりました。
歴史的に見ても『日本書紀』や『続日本紀』等に病魔退散、疫病終息を願って祈りを捧げた事項が多く記されています。これらの法要は南都の諸大寺に限ることなく、多くの神社寺院においても勤められた記録が伝えられています。
薬師寺は国家佛教として、国民の幸せを願うために礼拝供養することが、今を生きる我々僧侶の勤めであると考えています。
新型コロナウイルス感染症の病魔退散 速疾終息のみならず、この度の水害による被災地の復興並びに犠牲になられた尊いお命の菩提を願って発生以来日々の勤行に於いてお薬師様に祈らせて頂いています。
合 掌